「共存の智慧」 | 本光寺住職のダラブログ

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これからのお寺は変わらなければ。「人間ダラといわれて一人前」を掲げる住職の、御門徒さんとのふれあいブログ、略して「ダラブロ」

 いつ頃から女房が晩酌をするようになったのか覚えがありませんが、女房は素面の時はすこぶるおしとやか人なのですが(いや、これは冗談です)、酒が入ると途端に威勢がよくなるのです。態度も横柄になり、声も殊更大きくなって、テレビの音など聴こえなくなる位です。

 つい最近のある日の晩、いつものように二人で一杯やりながらテレビを見ていたら、日本国中到る所で熊が出没していて、これまでに70頭以上が捕獲され、その多くが射殺されていると報じていました。

 このニュースを聞いた女房はすかさず「可哀想に。お父さん、きっとこれで今年は山菜採りに人が山に行かんようになるわ」「うむ、恐いもんな」「そう、町の人間が猫も杓子も山に入ってダラみたいに木の実などの熊の食べ物を洗いざらい取って来るから、きっと熊は食べ物が無くて里に下りて来るんやで」「うむ、そうやな」「それに、山に人の食べ残しを沢山置いて来るもんやから、熊がそれを食べて味を覚えてしまうんや。丸で、人間が餌付けをして山から熊をおびき出しているようなもんやで。私の子供の頃は親から柿の木の実は全部取らず、上の方は鳥の分に残しておけ、とよく言われたもんやけど…」と、ビールの入ったグラスを片手にここまで一気に話し、今日も勢いがいい。
熊
 そこで、私も「うむ、そう云えば、いつか大杉の人に聞いた話やけど、大杉の川沿いの狭い土地に小さな田圃が幾つもあって、その田圃に川の水を引く水口の辺りの稲は刈り取らず少し残したそうや。鳥の餌のためにね」

 ところで、この大杉の谷深い鈴が岳の山中に手作りの小さな小屋を建て、独り住んでいる西出恵一さんという人が、最近3頭の射殺された熊の解体を頼まれて腹を開いてみたら、3頭とも胃袋の中が空っぽだった、と話をしてくれました。この話は先の女房の話を裏付けるものでした。熊のみならずイノシシにもサルにも、今の山には我々が想像する以上に餌が無いようです。そして、人間のエゴが山に棲む生きものの生態までも荒らし、その挙句お返しに人間の生活が脅かされて、互いに傷ついています。
熊1
 熊にしてみれば、ただ腹がペコペコだっただけなのにね、見つけられる度に殺されて、熊が哀れです。殺された熊が血を流して、大の字に仰向けにされてテレビの画面に写っている姿を見ていると、私は何かやり切れない想いがするのです。どう見ても、人間の方が愚かに思えてなりません。

住職の口癖  ウケねらいの話より、うなずかせてくれる話の方がいいな。


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